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死刑廃止議員連盟の総会

 
日付:  水曜日, 2011-02-16
 

2月16日、死刑廃止議員連盟の総会が衆議院第2議員会館で開催されま
した。

総会では、まず議連会長の亀井静香衆議院議員からの挨拶、そして事務
局長である村越祐民衆議院議員から報告がありました。その中で、議員
連盟の会長代行に中川秀直衆議院議員が就任すること、そして「重無期
刑の創設及び死刑に処する裁判の評決の特例等に関する法律案」を、今
国会へ提出できるよう取り組んでいきたい、との方針が述べられました。

総会での説明および配布資料によれば、この法案は4つの柱から構成さ
れています。

第一に、法定刑として死刑が規定されている罪について、仮釈放のない
「重無期刑」を創設すること。第二に、裁判における死刑に処する旨の
刑の量定は、構成員の全員一致の意見によるものとし、この要件を満た
さない場合には、重無期刑とすること。第三に、死刑制度の存廃その他
の死刑制度に関する事項について調査を行うため、平成27年3月31日
(施行日の3年後)までの間、各議院に「死刑制度調査会」を設置する
こと。第四に、この法律の公布の日から、平成28年3月31日(上記の
「死刑制度調査会」の設置期間満了の日から1年後)までの間は、死刑
を執行しないこと(死刑執行の停止)。

死刑廃止議連では、「議員提出法律案」としての国会提出を目指して、
これから更に議論を重ねたいとの方針でした。

 

国連総会で、死刑執行停止決議が3回目の採択!!

 
日付:  月曜日, 2011-02-07
 

12月21日、国連総会において、全世界の国ぐにに対し、死刑廃止を視野に入れ
て死刑の執行停止を行うよう求める決議が、賛成多数で可決されました。この
決議は、11月に国連総会の下の第三委員会において採択され、総会に提出され
ていました。

世界各国に死刑の執行停止を求める内容の決議が総会で採択されたのは、2007
年、2008年に続いて三回目となりますが、回数を重ねるごとに賛成国が増加し、
反対国が減少する傾向にあります。

この決議に対する賛成国と反対国の推移は、次の通りです。

【2010年】賛成 109カ国/ 反対 41カ国/ 棄権 35カ国
【2008年】賛成 106カ国/ 反対 46カ国/ 棄権 34カ国
【2007年】賛成 104カ国/ 反対 54カ国/ 棄権 29カ国

日本は、総会での採決において、過去二回と同様に反対票を投じました。11月
の第三委員会での採択の際も反対票を投じ、本会議での投票も反対票となりま
した。

ちなみに日本と共に反対票を投じた国ぐにとしては、中国、米国、インド、イ
ラク、イラン、インドネシア、スーダン、朝鮮民主主義人民共和国、ビルマ(
ミャンマー)などの国ぐにが挙げられます。

一方で今回、モンゴルやブータンが新たに賛成国に回りました。その他のアジ
ア諸国の反応としては、フィリピンや東ティモール、カンボジアなどが賛成票、
韓国、ベトナム、タイなどは棄権でした。モンゴルが賛成国になったため、東
アジアの国で3回連続反対票を投じた国は、中国、朝鮮民主主義人民共和国、日
本の3カ国だけとなりました。

死刑存置国が集中する地域と言われてきた東アジアですが、状況は死刑廃止に
むかって着実に変化しつつあると言えます。

国連総会は2012年末に、この問題を再び議題とする予定です。

国連総会 第三委員会にて「死刑執行停止決議」採択

 
日付:  水曜日, 2010-12-15
 

2010年 11月11日、国連総会の第三委員会において、全世界の国ぐにに対して死刑の執行停止を求める決議が、賛成多数(賛成107カ国、反対38カ国)で可決されました。

以下は決議文の日本語仮訳です。

*************************************

アムネスティ日本・仮訳
国連総会第三委員会・死刑執行停止決議
 
国際連合 A/C.3/65/L.23/Rev.1 2010年11月8
第65会期 国連総会 第三委員会
議題項目68 (b)
 
決議提出国
アルバニア、アルジェリア、アンドラ、アンゴラ、アルゼンチン、アルメニア、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ベニン、ボリビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブラジル、ブルガリア、ブルンジ、カンボジア、カーボベルデ、チリ、コロンビア、コンゴ共和国、コスタリカ、コートジボアール、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エクアドル、エストニア、フィンランド、フランス、ガボン、グルジア、ドイツ、ギリシャ、ギニア・ビサウ、ハイチ、ホンジュラス、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イスラエル、イタリア、キルギスタン、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルグ、マリ、マルタ、マーシャル諸島、メキシコ、ミクロネシア連邦、モナコ、モンテネグロ、モザンビーク、ノルウェー、オランダ、ニュージーランド、パラグアイ、フィリピン、ポーランド、ポルトガル、モルドヴァ、ルーマニア、ロシア、ルワンダ、サンマリノ、セルビア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、マケドニア、東ティモール、トルコ、ウクライナ、英国、ウルグアイ、バヌアツ
 
死刑の適用の停止
 
国連総会は、
国連憲章に盛り込まれた目的と原則に導かれ、
世界人権宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約、および子どもの権利条約を想起し、
死刑の使用の停止に関する国連総会決議62/149 および63/168において、国連総会が死刑を存置している国ぐにに対し、死刑の廃止を視野に入れた死刑執行停止を確立するよう求めていることを再確認し、
死刑執行における司法の誤りや欠陥は、撤回できず回復不可能であることに留意し、
死刑の使用の停止が、人間の尊厳に対する尊重と人権の強化および進展に貢献すること、そして死刑の抑止力としての価値にはなんら確証がないことを確信し、
死刑に関する各国での議論や地域的なイニシアティブの継続や、死刑の使用に関する情報公開を進める国ぐにの数が増加していることに留意し、
また、死刑の執行停止に関する各国間の技術的協力に留意し、
 
1、決議63/1684の実施に関する事務総長からの報告書、および同報告書に含まれる結論と提案を歓迎する。
2、また、死刑適用犯罪を減らすための各国での取り組みや、死刑の執行を停止する国ぐにが増加し、多くのケースにおいて死刑廃止に繋がっていることを歓迎する。 
3、あらゆる国ぐにに対し、
(a)    死刑に直面している者の権利保護の保障を規定する国際基準、特に1984年5月25日の経済社会理事会決議1984/50の付属書に定められた最低基準を尊重し、この件についての情報を国連事務総長に提供し、
(b)    可能な限りの情報に基づく透明性の高い国民的議論に寄与することができる、死刑の適用についての関連情報を公開し、
(c)     死刑の使用を徐々に制限し、死刑を科すことのできる犯罪の数を減らし、
(d)    死刑の廃止を視野に入れた死刑執行停止を確立することを求める。
 
4、死刑を廃止した国々に対し、死刑を再導入しないよう要請すると共に、死刑廃止に関する各国の経験を共有することを奨励する。
5、事務総長に対し、国連総会第67会期において、当決議の実施状況について報告するよう要請する。
6、この問題について、国連総会第67会期においても、人権の促進及び保護という議題の下で継続して検討することを決定する。

 

台湾法務部による違法な死刑執行に抗議する台湾死刑廃止推進連盟(TAEDP)プレス・リリース

 
日付:  土曜日, 2010-05-01
 

                                                              (日本語訳:「死刑に異議あり!」キャンペーン)

2010年5月1日
 
台湾死刑廃止推進連盟(TAEDP)、民間司法改革基金会(JRF)、台湾人権促進会(TAHR)、アムネスティ・インターナショナル台湾、台湾労工陣線、台北弁護士会人権委員会、チベット青年会議台湾支部、台湾緑の党および人本教育文教基金會は共同で、曾勇夫法務部長による4人の死刑囚の拙速な死刑執行命令に抗議する書簡を、5月1日、法務部に手渡した。アムネスティ・インターナショナルは、台湾政府の死刑執行再開を非難するニュース・リリースを発表して、台湾政府のこうした動きは、台湾の人権史上に残る深刻な汚点であると述べた。
 
曾勇夫法務部長は、4月30日のわずか1時間あまりの間に、死刑執行命令書に署名して、4人の死刑囚、張俊宏さん、張文蔚さん、洪晨耀さん、柯世銘さんを処刑した。死刑執行は死刑囚の家族にも事前に知らされず、執行前の最期の面会もかなわなかった。
 
我々は、このいわゆる「法律に基づいた死刑執行」に衝撃を受け、激しい怒りを覚える。以下は、法務部が示した死刑執行理由に対する我々の反論である。
 
 
張俊宏さんに対する違法な死刑執行
 
台湾死刑廃止推進連盟(TAEDP)は、台湾の死刑囚44人の代理人として、7人の弁護士に、司法院の大法官による憲法解釈を申立てるよう依頼した。だが、時間の制約のため、張俊宏さん、張文蔚さん、洪晨耀さん、柯世銘さんからの委任状は間に合わなかった。それでも、憲法裁判所の書記官は、請求手続きに必要な書類を10日以内に(2010年5月3日までに)提出するよう求める手紙を、7人の弁護士に送った。同時に、別々の刑務所に収監されていた4人の死刑囚にも、憲法解釈に関する彼らの意思を確認しようと試みた。
 
TAEDPは、4人の死刑囚が手紙を受け取った後に、彼らと連絡を取った。そこで、張俊宏さんは4月26日付けの署名付きの委任状をTAEDPに送った。彼は委任状の中で、憲法解釈を申立てるために、TAEDPの弁護士を選任する意思を明らかにした。したがって、張さんの申立は疑問の余地なく、全面的に合法である。
 
法務部の「死刑事件の再審査の実施要綱」に従えば、第2条1項の最初の規定は、憲法解釈の申立をしているケースについては、司法院は法務部長に死刑執行命令を発してはならないと規定している。それにもかかわらず、法務部長はこの要請を無視し、違法に死刑執行命令に署名しながら、法律に基づいて行動したと述べたことは遺憾である。
 
 
不明な柯世銘さんの意思
 
張文蔚さん、洪晨耀さんは直接、憲法解釈の申立の委任を拒否した。4人目の柯世銘さんは実際に返答がなかった。TAEDPは弁護士を台南刑務所に派遣し、柯世銘さんと直接会おうとしたが、職員は、柯世銘さんは誰であれ面会が禁止されていると答えた。彼らは、柯世銘さんがTAEDPの手紙を受け取り、彼が自由に手紙を書くことができたのかをTAEDPの弁護士に言うことができなかった。したがって、私たちは柯世銘さんが憲法解釈の申立を認めることを拒否したのかどうか全く分からなかった。
 
 
公正な裁判が為されていない
 
処刑された死刑囚のうち3人は、司法院から死刑を支持する最終的な判決を受ける際に弁護士が付いていなかった。馬総統により批准された市民的及び政治的権利に関する国際規約によると、いかなる死刑囚も裁判の全ての過程において、適法な法手続きとして弁護士を付されることとされている。しかし、台湾の刑事訴訟法338条は同条約に違反している。もし機会があれば、大法官は、国際社会により認められたこの基本的権利を擁護する機会を得て、死刑を違憲であると判断したかもしれない。法務部長の曾勇夫は、それにもかかわらず、意図的に且つ、無謀にもこれを無視し、大法官の決定の前に行動した。法務部は、「法律に基づいている」と主張しながらも、人の命をまるで価値がないものかのように扱い、過剰な権限を行使し、司法院の権限を侵した。これは法務部の死刑執行については慎重に行うという約束が嘘にすぎなかったことを証明している。それ故、法務部長はその政治的責任を負わなければならない。
 
 
国連自由権規約に対する無視
 
3月29日、TAEDPはまた、44人の死刑囚について、総統に対する恩赦請求(刑の減軽)も支援した。馬総統は、その請求を拒否せず、その請求を受理し、法務部に検討を行うよう求めることを表明した。法務部の声明は、この件についてまったく言及していない。これは国連自由権規約を無視し、規約で認められた権限を逸脱するものである。もし、政府が本当に「法律に基づいて執行」することを望むのであれば、死刑の減刑を求める請求に対してどのような手続きが取られたのか、明らかにするべきである。
 
 
人びとや神々の怒り?
 
法務部長は、自らの権力を注意深く 行使したと主張した。曾法務部長は、本来の手続きと共に、別の諮問委員会が「人々や神々の怒りをかきたてるような」事件について、慎重な検討を行ったと述べた。しかし、実際に私たちが目にしたのは、「許可を出し、判を捺す権限」という基準だけだった。今回の執行に関する許可書類を決裁した後で、法務部長は市民による調査のために、この諮問委員会の委員の名前や関連情報を公開すべきである。
 
TAEDPは、4年半に及ぶ死刑執行停止状態が一日で破られたことについて、深い悲しみを覚える。そして、台湾社会に対し、死刑制度を見直すよう、強くアピールする。法務部長は、死刑をめぐる議論が依然として続いているにもかかわらず、注意深い手続きなしに、関連する法と規則の見直しも行わないまま、死刑執行を推し進めた。それは、政府が一方の手で国連自由権規約に署名し、もう一方の手でそれを反故にするという意思表示をしたのである。
 
法務部の声明において、「憲法解釈を申し立てている40人の死刑囚に関して、法務部は、その申立がどのように処理されるのかを見極め、法律に基づいて行動する」としている。こうした状況を踏まえ、私たちは、死刑の即時停止や減刑に関する法律の制定を要求していく。

台湾が4年ぶりに死刑執行を再開

 
日付:  金曜日, 2010-04-30
 

 2010年4月30日午後7時前後に4名の死刑確定者に対して死刑が執行されました。2005年12月以来約4年半の死刑執行停止状態が終わりました。

 この執行が行われる前に、台湾死刑廃止推進連盟(TAEDP)は声明を発表し、「今年の後半に予定される総選挙を控えて、私たちは総督府と行政院、立法院、与党、野党に対して、死刑という生と死に関する問題よりも、自分たちの利害を優先することのないよう強く要請する。私たちは、行政府と立法府が台湾のとるべき進路を考慮するにあたって、普遍的な人権の諸価値を支持するよう求める。」と述べていました。しかし、執行は事前に死刑囚の家族にも知らされず、家族は最後の別れを告げる事さえも許されなかったそうです。今回の死刑執行について、政府は「法律に基づく死刑執行」だと主張していますが、TAEDPは違法な手続きによる死刑執行であると批判しています。

関連資料
・台湾死刑廃止連盟2010年3月10日付プレス・リリース(日本語訳)
http://www.abolish-dp.jca.apc.org/content/news2010-03-10t000000159
・台湾死刑廃止連盟2010年3月12日付プレス・リリース(日本語訳)
http://www.abolish-dp.jca.apc.org/content/news2010-03-12t000000160
・TAEDPの死刑執行抗議声明(日本語訳)
http://www.abolish-dp.jca.apc.org/content/news2010-05-01t000000165

大阪母子殺人事件で最高裁が死刑を事実誤認で破棄・差戻し

 
日付:  火曜日, 2010-04-27
 

 大阪平野区で2002年に主婦(当時28歳)と長男(当時1歳)が殺され放火された事件で、最高裁第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は、殺人と現住建造物放火の罪に問われた大阪刑務所職員(休職中)森健充被告(52歳)を死刑とした二審判決、無期懲役とした一審判決をいずれも破棄し、審理を大阪地裁に差し戻した。判決は5人の裁判官中4人の多数意見。判決では、「被告が犯行現場に行ったとは認められず、事実誤認の疑いがある」と指摘しており、差し戻し審で無罪となる可能性が出てきた。

 最高裁が死刑判決を破棄して差し戻すのは極めて異例で、戦後混乱期の松川事件、八海事件、1989年の山中事件など大半は無罪が確定しているという。

 被告は殺害された主婦の義父で、一貫して犯行を否認し直接証拠もなかったが、一二審判決では現場マンションの階段踊り場にあったたばこの吸い殻に被告の唾液が付着していたことを最大の根拠に被告が犯行現場に行ったと認定していた。

 しかし、最高裁第三小法廷は直接証拠がない事件で有罪を認定する際の新たな基準を示してうえで、問題の吸い殻について「事件翌日に採取されたのに茶色に変色しており、かなり前に捨てられた可能性が否定できない」として、被告が事件当日現場に行ったとは認定できないとした。

 判決では、直接証拠がなく間接証拠(状況証拠)で有罪を認定する場合の基準として、「被告が犯人でないとしたら説明のつかない事実が、間接証拠に含まれる必要がある」との判断を示し、「被告が犯人だとしても矛盾がない」という程度では有罪認定できないことを明確にした。

 ここ半年余りの間に足利事件、布川事件、名張毒ブドウ酒事件などの再審(再審請求)事件や通常事件でも死刑や無期刑の判決が再審や上訴審で覆される例が相次いでおり、冤罪との関係で死刑制度の危険性が改めて浮き彫りになっている。

関連記事:「名張毒ブドウ酒事件」で最高裁が再審開始取消し決定を差戻し

関連記事:布川事件の再審開始が確定、最高裁が検察側の特別抗告を棄却

関連記事:死刑求刑事件で広島高裁が一審無罪判決を支持

中国政府が日本人死刑確定者3名の死刑も執行、4日間で4人の執行

 
日付:  金曜日, 2010-04-09
 

 4月9日午前9時(日本時間午前10時)、中国で麻薬密輸罪で死刑判決が確定していた武田輝夫死刑囚(67歳)、鵜飼博徳死刑囚(48歳)、森勝男死刑囚(67歳)の3人の死刑が執行された。武田死刑囚と鵜飼死刑囚は大連で、森死刑囚は瀋陽で死刑が執行された。

 4月6日には同じく麻薬密輸罪で死刑判決が確定していた赤野光信死刑囚の死刑が執行されており、わずか4日間のうちに4人の日本人がたて続けに死刑を執行されたことになる。日本外務省によると、第二次世界大戦後に刑事犯として日本人が外国で死刑を執行された例はこれまでにないという。

 日本政府は岡田外相が駐日中国大使に、また訪中していた菅副総理も「死刑執行が日本の正論に与える影響」について懸念を表明したものの、死刑執行の中止を申し入れるなど死刑執行回避のための積極的な外交努力は行っていなかった。

 アムネスティ・インターナショナル日本などの死刑廃止を求める日本の市民団体は、4月5日~4月9日まで中国大使館前で死刑執行に対する抗議と死刑執行停止を求める行動を行ったが、4名の死刑執行をストップすることはできなかった。

アムネスティ・インターナショナル日本の抗議声明(4月9日)

監獄人権センターの抗議声明(4月9日)

日弁連のコメント(4月9日)

中国大使館前で、死刑執行に抗議する緊急アピール行動

 
日付:  金曜日, 2010-04-09
 

 中国政府は、4月6日に、麻薬密輸罪により死刑が確定していた赤野光信さんを、また4月9日には、同様の罪で死刑が確定していた武田輝夫さん、鵜飼博徳さん、森勝男さんに対する死刑を執行しました。

 この事態に対して、アムネスティ日本が呼びかけ団体となり、4月5~9日にかけて、中国大使館前において、今回の死刑を含む、中国でのあらゆる死刑に抗議し、あらゆる死刑の執行停止を求める緊急アピールが行われました。

 連日、アムネスティ日本やフォーラム90、「死刑を止めよう」宗教者ネットワークなど、様ざまな死刑廃止団体のメンバーが集い、「死刑執行を直ちに停止し、死刑廃止への一歩を!!」などと書かれたプラカードを持ち、抗議の声をあげました。こうした姿は民放各社で放映され、主要各紙でも取り上げられました。

 緊急のアクションでしたが、5日間でのべ70人もの人たちが駆けつけ、死刑廃止の声をあげて下さいました。今回、残念ながら、4人に対する執行を止めることはできませんでしたが、「死刑に異議あり」という声をあげる市民の姿を示すことができたことは、死刑のない東アジアに向けた大きな一歩だと思います。

関連記事:「中国政府が日本人死刑確定者3名の死刑も執行、4日間で4人の執行」

中国政府が日本人死刑確定者1名の死刑を執行

 
日付:  火曜日, 2010-04-06
 

 4月6日午前9時30分(日本時間午前10時30分)、中国の大連拘置所の関連施設で、麻薬密輸罪で死刑が確定していた赤野光信死刑囚(65歳)の死刑が執行された。執行方法は薬物注射によるとみられる。日本外務省によると、第二次世界大戦後に海外で日本人が刑事犯として死刑執行された例はこれまでにないという。

 中国政府は4月5日までに赤野死刑囚の執行を行うと通告していたが、5日午前に赤野死刑囚と親族との約1時間にわたる面会を認め、予定より1日遅い執行となった。

 日本政府は通告を受けて岡田外相が「死刑執行が日本の世論に与える影響」について駐日中国大使に懸念を伝え、訪日中の菅副総理が同様の懸念を表明したが、死刑執行中止の申入れなどは行っておらず、邦人の死刑執行回避の外交的努力はほとんどなされなかった。

 これは日本政府自身が、中国人を含む死刑の執行を現に行ってきたことも影響していると思われる。しかし、戦後初めての外国における邦人の死刑執行という深刻な直面して、自国の死刑制度に対する従来の姿勢の変更を含めて、新たな対応を取れないというのは問題である。

 薬物犯罪に対する中国の厳罰主義についても、死刑に関する国際人権基準に照らして死刑が許されないことを、日本政府としても言うべきである。

アムネスティ・インターナショナル日本の声明(4月6日)

監獄人権センターの声明(4月6日)

日弁連のコメント(4月6日)

「名張毒ブドウ酒事件」で最高裁が再審開始取消し決定を差戻し

 
日付:  月曜日, 2010-04-05
 

 1961年3月に三重県名張市で農薬入りのブドウ酒を飲んだ女性5人が死亡、12人が中毒症状を起こした「名張毒ブドウ酒事件」で、最高裁第三小法廷(堀籠幸男裁判長)は4月5日付で、奥西勝死刑囚(84歳)の再審を開始すべきか否かの判断を名古屋高裁に差し戻す決定を行った。

 この事件は、一審は無罪だったが控訴審で死刑判決が出て、1972年6月に最高裁が被告の控訴を棄却して死刑が確定した。第6次までの再審請求はいずれも棄却されたが、第7次再審請求について名古屋高裁が2005年4月に初めて再審開始と死刑執行停止の決定を行った。しかし、検察側がこれに異議を申立て、名古屋高裁の別の部が再審開始を取り消し、これに対して弁護側が特別抗告を申し立てていた。

 特別抗告審での最大の争点は、奥西死刑囚が使用したと自白した農薬「ニッカリンT」が実際に犯行に使われた農薬と一致するかという点で、弁護側が当時流通していた「ニッカリンT」を独自に入手して行った鑑定では「ニッカリンT」に含まれているはずの特定成分が検出されたのに、事件後のブドウ酒の鑑定ではこの特定成分が検出されておらず、事件で使われた農薬が「ニッカリンT」ではない疑いが出ていた。

 この点について、最高裁第三小法廷は、ニッカリンTが使われていなかったのか、鑑定の方法により検出できなかっただけなのかについて「(再審開始を取り消した)名古屋高裁の決定は科学的知見に基づく検討をしたとはいえず、いまだ事実は解明されていない」と指摘、弁護側の持つ「ニッカリンT」の提出を受けて改めて鑑定するなどの心理が必要として、5人の裁判官の全員一致で事件を名古屋高裁に差し戻した。

 この事件については、第一審で無罪判決、2005年4月に再審開始と死刑執行停止の高裁決定と、すでに2度にわたって実質無罪の判断が出ているわけで、それだけでも死刑判決を維持するに足りない。2005年4月の再審開始決定以降も再審開始をはばみ死刑判決を維持しようとし、逮捕当時35歳であった奥西氏を84歳の現在まで死刑執行の恐怖にさらし続けている検察側の対応は、許されるものではない。名古屋高裁はすみやかに再審開始決定をすべきである。

 「名張毒ブドウ酒事件」の再審が認められれば、戦後5番目の死刑再審事件となる。死刑事件についてもいまだに冤罪が絶えないことは、死刑制度の持つ本質的危険性を改めて明白にしている。