台湾法務部による違法な死刑執行に抗議する台湾死刑廃止推進連盟(TAEDP)プレス・リリース

 
日付:  土曜日, 2010-05-01
 

                                                              (日本語訳:「死刑に異議あり!」キャンペーン)

2010年5月1日
 
台湾死刑廃止推進連盟(TAEDP)、民間司法改革基金会(JRF)、台湾人権促進会(TAHR)、アムネスティ・インターナショナル台湾、台湾労工陣線、台北弁護士会人権委員会、チベット青年会議台湾支部、台湾緑の党および人本教育文教基金會は共同で、曾勇夫法務部長による4人の死刑囚の拙速な死刑執行命令に抗議する書簡を、5月1日、法務部に手渡した。アムネスティ・インターナショナルは、台湾政府の死刑執行再開を非難するニュース・リリースを発表して、台湾政府のこうした動きは、台湾の人権史上に残る深刻な汚点であると述べた。
 
曾勇夫法務部長は、4月30日のわずか1時間あまりの間に、死刑執行命令書に署名して、4人の死刑囚、張俊宏さん、張文蔚さん、洪晨耀さん、柯世銘さんを処刑した。死刑執行は死刑囚の家族にも事前に知らされず、執行前の最期の面会もかなわなかった。
 
我々は、このいわゆる「法律に基づいた死刑執行」に衝撃を受け、激しい怒りを覚える。以下は、法務部が示した死刑執行理由に対する我々の反論である。
 
 
張俊宏さんに対する違法な死刑執行
 
台湾死刑廃止推進連盟(TAEDP)は、台湾の死刑囚44人の代理人として、7人の弁護士に、司法院の大法官による憲法解釈を申立てるよう依頼した。だが、時間の制約のため、張俊宏さん、張文蔚さん、洪晨耀さん、柯世銘さんからの委任状は間に合わなかった。それでも、憲法裁判所の書記官は、請求手続きに必要な書類を10日以内に(2010年5月3日までに)提出するよう求める手紙を、7人の弁護士に送った。同時に、別々の刑務所に収監されていた4人の死刑囚にも、憲法解釈に関する彼らの意思を確認しようと試みた。
 
TAEDPは、4人の死刑囚が手紙を受け取った後に、彼らと連絡を取った。そこで、張俊宏さんは4月26日付けの署名付きの委任状をTAEDPに送った。彼は委任状の中で、憲法解釈を申立てるために、TAEDPの弁護士を選任する意思を明らかにした。したがって、張さんの申立は疑問の余地なく、全面的に合法である。
 
法務部の「死刑事件の再審査の実施要綱」に従えば、第2条1項の最初の規定は、憲法解釈の申立をしているケースについては、司法院は法務部長に死刑執行命令を発してはならないと規定している。それにもかかわらず、法務部長はこの要請を無視し、違法に死刑執行命令に署名しながら、法律に基づいて行動したと述べたことは遺憾である。
 
 
不明な柯世銘さんの意思
 
張文蔚さん、洪晨耀さんは直接、憲法解釈の申立の委任を拒否した。4人目の柯世銘さんは実際に返答がなかった。TAEDPは弁護士を台南刑務所に派遣し、柯世銘さんと直接会おうとしたが、職員は、柯世銘さんは誰であれ面会が禁止されていると答えた。彼らは、柯世銘さんがTAEDPの手紙を受け取り、彼が自由に手紙を書くことができたのかをTAEDPの弁護士に言うことができなかった。したがって、私たちは柯世銘さんが憲法解釈の申立を認めることを拒否したのかどうか全く分からなかった。
 
 
公正な裁判が為されていない
 
処刑された死刑囚のうち3人は、司法院から死刑を支持する最終的な判決を受ける際に弁護士が付いていなかった。馬総統により批准された市民的及び政治的権利に関する国際規約によると、いかなる死刑囚も裁判の全ての過程において、適法な法手続きとして弁護士を付されることとされている。しかし、台湾の刑事訴訟法338条は同条約に違反している。もし機会があれば、大法官は、国際社会により認められたこの基本的権利を擁護する機会を得て、死刑を違憲であると判断したかもしれない。法務部長の曾勇夫は、それにもかかわらず、意図的に且つ、無謀にもこれを無視し、大法官の決定の前に行動した。法務部は、「法律に基づいている」と主張しながらも、人の命をまるで価値がないものかのように扱い、過剰な権限を行使し、司法院の権限を侵した。これは法務部の死刑執行については慎重に行うという約束が嘘にすぎなかったことを証明している。それ故、法務部長はその政治的責任を負わなければならない。
 
 
国連自由権規約に対する無視
 
3月29日、TAEDPはまた、44人の死刑囚について、総統に対する恩赦請求(刑の減軽)も支援した。馬総統は、その請求を拒否せず、その請求を受理し、法務部に検討を行うよう求めることを表明した。法務部の声明は、この件についてまったく言及していない。これは国連自由権規約を無視し、規約で認められた権限を逸脱するものである。もし、政府が本当に「法律に基づいて執行」することを望むのであれば、死刑の減刑を求める請求に対してどのような手続きが取られたのか、明らかにするべきである。
 
 
人びとや神々の怒り?
 
法務部長は、自らの権力を注意深く 行使したと主張した。曾法務部長は、本来の手続きと共に、別の諮問委員会が「人々や神々の怒りをかきたてるような」事件について、慎重な検討を行ったと述べた。しかし、実際に私たちが目にしたのは、「許可を出し、判を捺す権限」という基準だけだった。今回の執行に関する許可書類を決裁した後で、法務部長は市民による調査のために、この諮問委員会の委員の名前や関連情報を公開すべきである。
 
TAEDPは、4年半に及ぶ死刑執行停止状態が一日で破られたことについて、深い悲しみを覚える。そして、台湾社会に対し、死刑制度を見直すよう、強くアピールする。法務部長は、死刑をめぐる議論が依然として続いているにもかかわらず、注意深い手続きなしに、関連する法と規則の見直しも行わないまま、死刑執行を推し進めた。それは、政府が一方の手で国連自由権規約に署名し、もう一方の手でそれを反故にするという意思表示をしたのである。
 
法務部の声明において、「憲法解釈を申し立てている40人の死刑囚に関して、法務部は、その申立がどのように処理されるのかを見極め、法律に基づいて行動する」としている。こうした状況を踏まえ、私たちは、死刑の即時停止や減刑に関する法律の制定を要求していく。