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東アジア死刑廃止大会 第1分科会に80人が参加

 
日付:  土曜日, 2009-12-05
 

 12月5日に東京千代田区の明治大学で、「東アジア死刑廃止大会」の第1分科会「死刑と向き合う市民~裁判員制度と韓国参与員制度を比較して~」が開催された。参加者は約80人。

 韓国では、日本より早く2008年1月から、市民が刑事裁判に参加する「国民参与員制度」が試験的に導入され、2008年は約60件の参与員裁判が実施された。韓国の参与員制度は被告人に選択権があり、死刑執行が12年間停止しているなど、日本とは異なる状況もあるが、量刑にも市民が関与する点は日本の裁判員制度と共通している。

 この日のセミナーでは、韓国の参与員制度に詳しい崔信義弁護士、『世界の裁判員 14か国 イラスト法廷ガイド』(2009年、日本評論社)の共著者でジャパンタイムズ記者の神谷説子さん、死刑廃止議員連盟の前事務局長の保坂展人さん、監獄人権センター代表で刑事訴訟法の専門家でもある村井敏邦さんを講師に招き、裁判員制度によって市民が死刑事件に直面しようとしている状況をどのように考えるかをテーマに話し合った。

分科会1全景 神谷さんは、傍聴した釜山地方法院(裁判所)での参与員裁判の様子を、写真を使って紹介し、韓国の参与員制度の概要を説明された。対象事件は日本と同じ重大事件だが被告人に選択権があること。参与する市民は「陪審員」と呼ばれ、死刑無期事件では9名、否認事件では7名、自白事件では5人が3人の裁判官と一緒に裁判を行うこと。有罪無罪の事実認定は陪審員だけの全員一致で「勧告」し(一致しない場合は裁判官の意見を聞いた上で、陪審員だけの多数決)、量刑は裁判官の意見を聞いて陪審員だけで「意見」を決定すること。陪審員の「勧告」「意見」に裁判官は拘束されないことなどが説明された。

 崔さんは、韓国の死刑制度の状況について、現在58人の死刑確定者がいること。1997年を最後に12年間死刑が執行されていないこと。最近の連続殺人事件をきっかけに「サイコパス(人格障害)による連続殺人については例外的に死刑を認めてよいのではないか」という議論が起きていること。他方で、死刑執行停止の前後の比較から「死刑に犯罪抑止力はない」とする研究結果も出ていることなどが紹介された。
  また、2008年に行われた60件の参与員裁判のうち、陪審員の評決や裁判官の判決に反映されなかった7件はすべて、陪審員が無罪か一部無罪を評決した事件であったこと。死刑が求刑された参与員裁判は2008年と2009年に1件ずつあったが、一方は無期刑、他方は13年の有期刑であったことが報告された。

 保坂からさんは、2002年に韓国の死刑廃止法案に触発されて死刑廃止議員連盟が発足し、2003年に「死刑執行停止、調査会設置、重無期刑導入」の法案(未提出)を作ったこと。その後、2006年以降の3年間で35人という大量執行という状況下で、昨年「裁判員裁判での死刑評決の全員一致制、代替刑としての終身刑」法案を作ったこと。裁判員裁判で死刑判決が出れば、「市民の決定に法務大臣は従わないのか」という執行圧力が強まるおそれがあり、それ以前に審査会を設置して、死刑事件を裁判員裁判の対象からはずすか全員一致制を導入するべきだと述べられた。

 村井さんからは、韓国の最高裁長官や高麗大の参与裁判監視機関との会談の様子が紹介され、また韓国の司法改革では「拘束力ある陪審制」が目指されたが、憲法上「法官に裁判」が保障されている点がネックになっていること。参与員裁判の件数が少ないのは性犯罪者や共犯者が選択しないケースが多いので、被告人に対するアピールも課題になっていること。日本の裁判員制度については、陪審員の秘密保持義務を撤廃すべきことが述べられた。
また、市民が死刑判決の直面することによって死刑に疑問が生じる可能性があるので、死刑事件を対象事件から除くべきではなく、死刑廃止論者も裁判員を拒否せず評議で死刑に反対すべきだと問題提起された。

冤罪執行の疑い、飯塚事件で執行された元死刑囚の遺族が再審請求

 
日付:  水曜日, 2009-10-28
 
 福岡県飯塚市で1992年2月に小学1年の女児2人が殺害された「飯塚事件」で、殺人と死体遺棄などの罪で死刑が確定し、昨年(2009年)10月に死刑が執行された久間 三千年(くま・みちとし)さんの再審請求を、10月28日、久間さんの妻が福岡地裁に行いました。
 飯塚事件では、すでに再審が開始されている「足利事件」と同じ方法のDNA型鑑定が有力な証拠の一つとなっていた。足利事件では当時の最新のDNA再鑑定によってDAN鑑定が誤りであったことが明らかになっています。
 弁護団は残されていた 久間元死刑囚の衣服などの鑑定を、足利事件のDNA型再鑑定を手がけた筑波大学の本田克也教授に依頼しました。その結果、捜査段階の鑑定では元死刑囚と真犯人のDNA型「16-26型」につで一致したとされていたが、当時の鑑定写真を検証すると、元死刑囚の型は「16-27型」と判断すべきだと結論付けられました。
 今回再審が認められれば、死刑執行後に冤罪が認められた初めてのケースとなり、死刑存廃論議にも大きな影響を与えずにはいないでしょう。

新宿で、世界の死刑に反対するデモを開催

 
日付:  土曜日, 2009-10-10 17:00
 

 シンポジウム「響かせあおう 死刑廃止の声2009 裁判官の証言 誤判は避けられない!」終了後、世界の死刑廃止を訴えるデモンストレーションが、アムネスティ・インターナショナル日本の主催で行われました。
2年連続となった新宿での死刑廃止デモでは、「死刑に異議あり!」と書かれた横断幕を先頭に、「無実を訴える死刑囚への執行をくい止めよう」などと訴えるプラカードを手にした約100人のデモ参加者が歩きました。デモ隊は「世界の死刑を廃止しよう!」と声を挙げながら、新宿通りから新宿駅南口を通るコースを歩きました。沿道の通行人の注目度は高く、中にはこちらに手をふる人や、デモ隊の呼びかけにうなずく人も少なくありませんでした。

 今回のデモを主催したアムネスティ日本・死刑廃止ネットワークセンターでは、今後もこうしたデモを開催し、死刑廃止を訴える声を日本社会に発信していきたいと考えています。

死刑廃止デー集会 「裁判官の証言、誤判は避けられない!」

 
日付:  土曜日, 2009-10-10 13:00
 

 死刑廃止世界連盟(World Coalition Against the Death Penalty)が2002年に発足し、その翌年から10月10日を世界死刑廃止デーとしました。加盟団体である「死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90」が中心となって、毎年この日に集会を開いています。今年は「響かせあおう 死刑廃止の声2009 裁判官の証言 誤判は避けられない!」が3部構成で行なわれ、約250名の人たちが集まりました。

 最初に、死刑廃止議員連盟の事務局長である保坂展人さんが発言されました。その後、同議員連盟会長である亀井静香さん、社民党党首の福島みずほさんからのメッセージが読まれました。保坂さんは、民主党に政権が変わった今こそ、死刑制度に関して国民的な議論を起こそうと訴えました。

 第1部は今年で5回目となる「死刑廃止のための大道寺幸子基金」主催『死刑囚の表現展』の選考委員による作品の講評と受賞作の発表がありました。選考委員である加賀乙彦さん、川村湊さん、池田浩士さん、太田昌国さんが壇上で話されました。文芸作品が10作品、絵画作品が11作品の応募がありました。何枚にも渡る迫力ある山水画を描かれた謝依梯さんが優秀賞を獲得、その他奨励賞が3作品、努力賞が4作品、技能賞が1作品となりました。また基金から拠出される再審請求等への補助金が、6名の方に出されることも発表されました。

 第2部では「足利事件」の菅家利和さんと佐藤博史弁護士が登壇し、岩井信弁護士が進行役となって事件について話されました。始めに佐藤弁護士が事件の概要を、地図や証拠品の映像を映し出しながら説明しました。菅家さんが無理やり自白させられ犯人とされたこと、地裁から最高裁までの審判で正しい審理が全くなされなかったこと、新しいDNA鑑定でやっと無罪を証明できたことの経を述べられました。その上で、間違ったDNA鑑定だけの証拠で、昨年10月に死刑執行されてしまった「飯塚事件」の久間三千年さんのことに言及されました。誤った証拠で死刑宣告され、処刑されてしまったことの理不尽さを断罪し、このようなことを招く死刑制度は即刻無くさなければいけない、と強く訴えました。その後、検察から菅家さんの尋問テープが新たに渡されたこと、何とか再審の場においてテープを公にしたいことなどが、話されました。「開けたパンドラの箱を、検察と裁判所はむりやり閉じようとしている。私たちは決して箱を閉じさせず、どうしてこのような冤罪事件起きたのかを、再審を通じて全てを白日の下に出させなくてはいけない」と情熱を込めて佐藤弁護士は訴えました。

 第3部は、元裁判官からのアンケート結果を基にした、元裁判官によるシンポジウムが行なわれました。これまで死刑を宣告してきたかもしれない元裁判官へのアンケートを行い、その結果を基に、元裁判官三人と、進行役の安田好弘弁 護士が話し合いました。安田さんが「誤判が避けられないと答えている人が、実に8割~9割いるということに、私たちは一番驚いたのです」と言うのにたいして、木谷さんが次のように答えました。「私は誤判が避けられるという人が12名いることに驚きました。刑事裁判をやっていれば、誤判は必ず起こるものです。私の出した判決でどれが誤判であるかは今もわかりませんが、誤判であった可能性は常にあります」。誤判が避けられないのは、裁判官をやっている者にとっては当たり前のことである、と木谷さんが述べられたのです。三人の元裁判官のお話からは、現状の司法界の持つ絶望的な状況が浮かび上がってきました。

 刑事裁判で誤判が避けられないとするならば、少なくとも死刑制度は即刻無くさなくてはいけない。ましてや死刑執行は絶対に止めなければいけない。そのことの思いをますます深くする集会でした。

市民有志が「新法相に死刑執行の停止を要求する市民の共同声明」を呼びかけ

 
日付:  木曜日, 2009-09-17
 

 9月17日午前零時過ぎの千葉新法相の初記者会見を踏まえ、同日午前1時に「千葉景子新法相に、死刑執行の停止を強く要求する市民の共同声明」への賛同を呼びかけるアピールが、「死刑廃止を求める市民の声」の井上澄夫氏など多数の呼びかけ人によって発せられました。

 呼びかけ文を以下に転載します。


「千葉景子新法相に、死刑執行の停止を強く要求する市民の共同声明」に、至急、ご賛同下さい!!

〔呼びかけ人〕

浦 島悦子(沖縄・名護市) 平良 修(沖縄・沖縄市、沖縄から基地をなくし世界の平和を求める市民連絡会、牧師) 西尾市郎(沖縄県那覇市、平和をつくる琉 球弧活動センター、牧師) 小川みさ子(鹿児島市議会議員) 木村 朗(鹿児島大学教員) 田中信幸(熊本県熊本市、イラク訴訟元原告) 舟越耿一(市民 運動ネットワーク長崎) 梶原得三郎(大分県中津市、草の根の会) 木村眞昭(福岡県福岡市、浄土真宗本願寺派妙泉寺住職) 青柳行信(NGO人権・正義 と平和連帯フォーラム福岡・代表) 筒井 修(福岡地区合同労働組合代表執行委員) 脇 義重(平和をあきらめない人々のネットワーク・福岡) 渡辺ひろ 子(福岡県築上郡築城町、平和といのちをみつめる会代表) 浦部頼子(山口県山口市、「憲法を活かす市民の会・やまぐち」共同代表) 大谷正穂(山口県下 関市、アイラブ・KENPO・ネットワーク) 纐纈 厚(山口県山口市、山口大学教員) 廣崎リュウ(山口県下関市、死刑廃止を求める市民の声・共同代 表) 藤井純子(広島県広島市、ピースリンク広島・呉・岩国) 宇田川健次(岡山県総社市、ハンドインハンド岡山) 安西賢誠(愛媛県松山市、真宗大谷派 専念寺住職) 宮本恵(愛媛県松山市、キリスト教牧師〔日本バプテスト道後キリスト教会/中国・四国バプテスト教会連合社会委員〕) 奥田恭子(愛媛県松 山市、死刑廃止を求める市民の声・共同代表) 阿部悦子(愛媛県今治市、愛媛県議会議員) 岩崎淳子(香川県高松市、前高松市議会議員) 安斎育郎(立命 館大学名誉教授) 長谷川存古(大阪府箕面市、関西大学名誉教授) 吉田孝子(大阪府大阪市 グループ・テ) 近藤ゆり子(岐阜県大垣市、9条の会・おお がき) 山本みはぎ(愛知県名古屋市、不戦へのネットワーク) 石下直子(神奈川県横浜市、かながわ憲法フォーラム) 細井明美(神奈川県横浜市、ピース アクティビスト) 小牧みどり(神奈川県相模原市、ブログ「ブーゲンビリアのきちきち日記」) 本野義雄(神奈川県川崎市、市民の意見30の会・東京)  石川逸子(東京都葛飾区、『ヒロシマ・ナガサキを考える』発行者、詩人) 岡田良子(東京都杉並区、西東京平和遺族会) 葛西則義(東京都府中市、市民意 見広告運動) 諸橋泰樹(東京都小金井市、フェリス女学院大学教員) 漢人明子(東京都小金井市議会議員・みどりの未来) 田鎖麻衣子(東京都新宿区、 NPO法人・監獄人権センター、弁護士) 武田隆雄(東京都渋谷区、日本山妙法寺) 辻子 実(東京都目黒区、キリスト者) 西田和子(東京都港区、市民 の意見30の会・東京) 花村健一(東京都江戸川区、樹花舎代表) 谷島光治(東京都三鷹市、アンポをつぶせ!ちょうちんデモの会) 長谷川修児(東京都 世田谷区、『遊撃』発行者、詩人) 井上澄夫(埼玉県新座市、死刑廃止を求める市民の声・共同代表) 澤野耕司(埼玉県さいたま市、神父) 志茂美栄子 (埼玉県新座市) 加賀谷いそみ(秋田県男鹿市、死刑廃止を求める市民の声 ・共同代表) 七尾寿子(北海道札幌市) 大嶋薫(北海道札幌市、札幌市議会議員)  〔順不同〕

2009年9月17日

鳩山内閣の法務大臣に千葉景子氏が就任しました。就任直後の記者会見で千葉新法相は死刑執行については「慎重に判断する」とのべ、死刑制度について「国民的な議論が必要」と表明しました。

みなさん、死刑執行を停止させる重要なチャンスです。千葉新法相に、これ以上、死刑を執行しないよう、みんなで、強く、強く要求しようではありませんか。下記の「市民の共同声明」に、どうか、至急、ご賛同下さい。
声明はご賛同の締めきりのすぐあと、千葉法相と鳩山首相に提出します。ご賛同の要領は次のとおりです。

◆賛同は個人・団体(グループ)を問いません。

▼賛同者になっていただける場合は、大まかな在住の地(たとえば、大分県中津市、岩手県岩手郡滝沢村)をお知らせ下さい。

▼団体(グループ)賛同の場合は所在地(たとえば、静岡県浜松市)をお知らせ下さい。「九条の会・○○」のように名称に地名がついているときはその限りではありません。

◆賛同の締めきりと連絡先
▼賛同の表明は【10月4日(日)までに】お願いします。

▼賛同表明の連絡先は次の通りです。

「市民の声」電子メール アドレス : shikei_haishi@yahoo.co.jp

※ お名前・おおまかな住所、団体(グループ)名・所在地に加えて、必ず「声明に賛同します」とご明記下さい。なお上記メールアドレスはご賛同の連絡専用です。

【ご協力のお願い】この共同声明にご賛同のみなさんにお願いします。このメールをみなさんのご友人やお知り合いの方々にご転送下さい。またご関係のメーリングリストやそれぞれのブログ、ホームページでご紹介下さい。どうか、よろしくお願いします。

◆〔個人情報の保護について〕 賛同者や賛同団体のお名前をインターネット上で公表することはありません。ただし賛同件数については、声明提出後、賛同者と賛同団体のみなさまに、運動の経過とともにご報告します。また賛同件数はインターネット上で公表いたします。

◆賛同の集約と千葉法相・鳩山首相への提出は、「死刑廃止を求める市民の声」が担当します。「市民の声」の共同代表(兼事務局)は下記の4人です(順不同)。
井上澄夫 (埼玉県新座市、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)
加賀谷いそみ (秋田県男鹿市、男鹿の自然に学ぶ会)
奥田恭子 (愛媛県松山市、心に刻む集会・四国)
廣崎リュウ (山口県下関市、下関のことばと行動をつなぐ『海』編集委員)

千葉景子新法相に、死刑執行の停止を強く要求する市民の共同声明

 
私たちは、日本政府・法務省が現在、人権を何よりも尊重する世界の大勢に逆らって死刑の執行を強行し続けていることに、耐えがたい恥ずかしさと深い憤りを感じています。

私たちは法務大臣に就任したあなたに、死刑執行命令を下さないよう、強く要求します。

世界の流れは死刑廃止へと向かっています。死刑を廃止した国の数は1981年末には63カ国でしたが、1991年末には83カ国、2000年末には118 カ国と年々増え、本年(2009年)6月には140カ国に達しました。192の国連加盟国中、実に72%の国々が死刑を廃止しているのです。

最近では、3月19日に米国のニューメキシコ州が、4月27日にアフリカのブルンジ共和国が、さらに6月23日には同じくアフリカのトーゴ共和国が死刑を廃止しました。
また昨年10月、国連の自由権規約委員会が日本政府に死刑廃止を強く勧告したことは記憶に新たなところです。そして同年12月の国連総会は死刑執行停止決議を採択しましたが、それはその前年(2007年)12月の同決議採択より多くの賛成を得てなされたのでした。

さらに本年7月28日の森英介法相による3人の死刑執行に対しては、欧州連合(EU)が議長国声明を発して「遺憾の意」を表明するとともに、日本政府に「死刑を法的に完全に廃止するまでの間、その適用を停止するよう」要求しました。

いわゆるG8の中で死刑を存置しているのは、米国と日本だけですが、米国は死刑を大幅に減らしています。

しかし日本はこのような世界の流れにあえて挑戦するかのように、死刑の執行回数を増加させています。2006年には4人、2007年には9人、そして 2008年には15人、2009年には7月までに7人の確定死刑囚に死刑が執行されました。しかも日本の法務省は隔月執行を方針とし、司法における死刑判 決も2 004年以降激増しています。
日本はまさに「死刑大国」の醜態を世界にさらしています。

足利事件では無期懲役の判決 を受けていた菅谷利和さんについて再審開始決定がなされ、菅谷さんは釈放されましたが、それが意味するものは刑事事件にも誤判がありえるということです。 ところが飯塚事件で死刑判決を受けた久間三千年さんに対しては、再審請求の準備中であったにもかかわらず、昨年10月、死刑が執 行されてしまいました。

私 たちは重ねて、あなたが死刑を執行しないことを強く要求します。あなたがなすべきことは、死刑廃止の滔々たる世界の大潮流に沿って、死刑制度廃止の努力を 始めることです。法務大臣としてのあなたの最初の仕事が「死刑大国」の汚名を返上することであることを私たちは心から望みます。

鳩山新政権の法相に死刑廃止議連の千葉景子氏が就任

 
日付:  水曜日, 2009-09-16
 
 民主党・社民党・国民党の連立による鳩山新内閣の法務大臣に、死刑廃止議連の千葉景子参議院議員が就任した。
 千葉景子・新法相は、9月17日未明の就任記者会見で記者からの質問に答えて、自身が死刑廃止議員連盟の所属することを明らかにしたうえで、死刑執行については「人の命ということなので、慎重に取り扱っていきたい。法務大臣という職責を踏まえながら慎重に考えていきたい」と答え、死刑執行に消極的なニュアンスをにじませた。
 また、死刑制度の今後のあり方について、「これだけ死刑の存置・廃止について議論があり、終身刑の導入についての議論もある。裁判員制度の導入で多くの皆さんが深い関心を抱いていると思うので、ぜひ広い国民的な議論を踏まえて、道を見いだしていきたい」と述べた。
 その他、記者会見の冒頭で、民主党のマニフェストの実現をめざす考えを示し、特に以下の3点について実現をめざすと明言した。
1 内閣府に人権擁護機関を創設する。
2 国連人権諸条約の個人通報制度を批准・導入する。
3 取調べの可視化を推進する。
 1~2は死刑執行の停止、死刑廃止にとっても有利に働くと考えられる。特に、個人通報制度については、各国の実績を見ると、死刑囚からの通報も多数あるようで、実現すれば日本の死刑執行停止にとってもプラスになると考えられる。
  鳩山新内閣には、千葉法相のほかに、死刑廃止議連会長の亀井静香氏や福島瑞穂氏など死刑廃止議連に所属する議員が入閣しており、死刑執行の凍結と死刑廃止に向けた議論が活発化することを期待したい。
 
記者会見の録画はこちら >>> http://www.youtube.com/watch?v=TVBelXSpwwE
 

アムネスティが精神障害を持つ死刑囚の執行停止を日本に求める報告書

 
日付:  木曜日, 2009-09-10
 
 アムネスティ・インターナショナルは、新しい報告書「首に掛けられたロープ:日本における精神医療と死刑」の中で、日本において精神障害を持つ死刑囚に死刑が執行されているこ とは、日本が署名している、深刻な精神障害を持つ死刑囚を死刑から保護するよう義務づける国際基準に違反している、と強く批判した。
 
詳しくは >>> こちら

7/28の死刑執行に抗議する集会

 
日付:  土曜日, 2009-08-08
 

 8 月 8 日 ( 土 ) に文京区男女平等センターで、 7 月 28 日 ( 火 ) の 3 人の死刑執行に対する抗議集会が開かれました。今回の死刑執行は、 森英介法務大臣による 3 回目の執行であり、これで在任期間 10 ヶ月の間に 9 人を処刑した事になります。 2006 年 12 月 25 日の長勢元法務大臣の死刑執行から始まった大量処刑は、鳩山、保岡、森法務大臣と続いた 2 年 7 ヶ月の間に執行 11 回、 35 人に上ります。東京拘置所では、中国籍の陳徳通 ( ティンデュトン ) さん (41 歳 ) が、大阪拘置所では、前上 ( マエウエ ) 博さん (40 歳 ) と山地悠紀夫さん (25 歳 ) が処刑されました。抗議集会は、安田好弘弁護士から死刑をめぐる現状の話が初めにあり、ジャーナリスト青木理さんからはご自身の近著「絞首刑」にかかわっての加害者と被害者をめぐる話などがあり、処刑された陳徳通さんと面会をしていた A 神父が、陳さんとの交流を報告なさいました。その他、前上さんと山地さんの弁護人であった方々からの抗議文書が紹介されました。

 安田弁護士の発言は、今回の衆議院解散後の執行 (1969 年以来 40 年ぶり ) は政治的空白期間を狙ったものであり、政権交代が現実味を帯びている今、民主党が政権を取れば当分の間死刑執行ができなるかも知れない、という意図的な駆け込み的処刑である、と法務省を非難するものでした。裁判員制度が無事導入されるまでは半年近くの間は死刑執行をせず、 8 月 3 日から実施される目前を狙った、死刑存置のための政治的な執行でもあると指摘しました。その上、前上さんと山地さんの執行は確定から 2 年しか経っておらず、しかも控訴審を行なわず、一審のみで死刑を確定したもので、死刑囚は必ず三審を保障しなさいという国連の勧告を無視するものであり、確定死刑囚の人権を無視するものである、と今回の執行を厳しく指弾しました。

 青木理さんは、近著「絞首刑」の中から多くの事例を紹介しながら話されました。実際に死刑執行を行なうことの無惨さや、その執行にかかわる人々の後々の人生にまで影響を与える精神的な傷についての話。殺人事件をめぐる被害者家族と数多く会って話を聞き、その人たちがいかに深い傷を抱えているか、事件のことはどこまで行ってもいつまで経っても決して忘れられず、加害者を赦すことなどできない、といった話。少年事件で死刑囚となった男性と実際に会い話しをしたこと。その彼と会えば普通の青年であり、とても凄惨な殺人事件を起こしたとは信じられないという話。その彼が被害者遺族と会ったことの話しなども紹介されました。

今回処刑された人たちは、次のような方々でした。

※陳徳通 ( ティンデュトン ) さん (41 歳 )

 陳さんは日本語をほとんど話せませんでした。 1999 年に中国人 3 人が殺された事件で、被害者も加害者も中国人で顔見知りであり、同郷の人たちでした。故郷に残してきた妻と子どもは、同郷の被害者遺族から激しい追及を受け、故郷を逃げ出し厳しい生活をしているとのことです。この集会で 3 年間陳さんと面会をしてきた A 神父が話されました。日本語ができない陳さんは、神父が会い始めた当初はよく保護房に入れられていたそうです。最初の頃は会いに行っても、暴れているとのことで面会できなかったことがあったそうです。しかし、希望して最近は猛烈に働き始めたそうです。手先がすごく器用で、人の何倍も働き報酬を得るようになりました。その報酬の 1 万円を「日本の貧しい人たちにあげて欲しい」と神父に渡されることがあったそうです。神父が「それはあなたが使うべきだ」と言ったそうですが、頑として希望通りにして欲しいということで、神父は陳さんの希望通り寄付しました。死刑確定したのが 2006 年 6 月であり、 3 年しか経っていないので、本人はまさか自分が処刑されるとは、全く考えていませんでした。処刑された 7 月 28 日に神父は面会に行っています。その日に処刑されるとは全く知らないで、その朝いつものように面会に行くとしばらく待たされた後、刑務官から「今日は会えません」と言われたそうです。また、謹慎処分でも受けたのかと思い帰宅しましたが、処刑されたことを知り、大変なショックを受けたとのことです。神父は、はっきりとした事は言われませんでしたが、関係者から執行のときの様子を聞いたようです。情報が漏れると迷惑をかける人が出るとのことで、詳しい話は聞けませんでした。しかし、言葉の端々から想像すると、陳さんの死刑執行の場は、陳さんのたいへんな抵抗があり、修羅場以上の凄惨なものではなかったかと思われます。このようにして中国人を処刑するというこの国は、中国を人権後進国と言うことができるのでしょうか。

•  前上博さん (40 歳 )

 事件は、 2005 年にインターネットの自殺サイトを利用して、そこにアクセスしてきた人を連続して 3 人殺したというものでした。死んでいく人を見ると興奮するという性癖があったと言われています。彼は自分がある種の病気であることを自覚していました。前上さんの弁護人であった B さんが「前上博氏の執行に抗議します」という抗議文をこの集会に寄せています。その中から抜粋させていただきます。

 「前上博氏は常に優しい思いやりを感じさせる人物でした。被害者及び遺族に対しての思いには、反省とか後悔とかいった月並みな言葉ではとうてい表せない深いものがあって、弁護人として衝撃を受けることもありました。前上氏の思いは、自分のような人間が再びこの世にあらわれることのないように、自分の存在の全てを十二分に研究して欲しいということでした。得たい知れないスイッチがパチッと入ったとたん、自分でも全く説明のつかない衝動を覚え、自分でも抑えようのない状態になって、犯行をしていたというのです。 ( 中略 ) 何とかこれを防止したいと思い、進んでカウンセリングに通うなどして努力をしていました。 ( 中略 ) 同様の事件の受刑中にも、そして出所後にも何らの指導も援助もないまま孤独のままに放置され、そのうちに 3 名の殺人という悲劇になったのです。欧米では、性犯罪者への再発防止プログラムがすでに研究の段階を越えて、実施に入っています。前上氏は、わが国においても、このようなプログラムがあれば不幸な被害者と加害者を生まない世界ができる可能性があるということを知っていました。そして、裁判において自らをその検討のための材料にしてほしいと訴えていたのです。 ( 中略 ) 強く求めていた情状鑑定は採用されませんでした。結論は死刑でした。私は即日控訴しましたが、前上氏は取下げてしまいました。 ( 後略 ) 」

•  山地悠紀夫さん (25 歳 )

 2005 年 11 月に姉妹殺人事件で起訴され、 2006 年 12 月に大阪地裁で死刑宣告され、弁護人は控訴したものの本人が取下げ、 2007 年 5 月に確定しました。山地さんは、 16 歳のとき自分の母親を金属バットで殺害しています。父親は、母親と彼にひどい暴力を振るっていたそうです。その父親が中学生のときに亡くなりました。その後母親はパート仕事をし、彼は新聞配達をしながら、家にお金を入れて暮らしていたようです。母親を殺した原因はよくわかりませんが、父親がいなくなり母親との生活に期待していたのを、多額の借金を作っていく母親に、ある意味で裏切られたと思ったのかもしれません。少年院を出て、パチンコのゴト師仲間になって生きていましたが、その仲間にも見捨てられてしまいます。そこで自暴自棄になり「母親を殴殺した時に、もがき苦しんでいった姿にかつてない興奮と快楽を得た事を思い出し、誰でもいいから人を殺して同じ興奮を得たいと考えた」として姉妹殺人を犯してしまったようです。

 弁護人であった C さんと D さんがこの集会に寄せた「山地悠紀夫氏に対する死刑執行に抗議する」の中で次のように書いています。「(確定後)弁護人の一人とは接見に応じていたが、その他の人とは親族を含め、面会だけでなく通信等も拒絶し孤独の中に閉じこもっていた。山地氏は逮捕後、自ら処刑される事を望んでいるかのようなこと述べたり、露悪的な言動を示すこと等により自らの弱さを隠し、世間から逃れようとしていたように感じられる。山地氏は犯行時 22 歳、現在 26 歳。生きていて何もいいことはなかったと言い、社会と切り離されるなかで今回執行されてしまった。捜査公判を通じた山地氏は、わざと自らを悪く述べ真実とは異なる事実を述べていたのではないかとの疑念は、未だ残る。山地氏の心に迫る弁護ができなかったことは改めて弁護人として無念である ( 後略 ) 」山地さんは死刑判決後、次のように言ったそうです。「生まれてくるべきでなかった。お世話になりました」

 アムネスティ日本死刑廃止ネットワーク東京 可知

死刑執行に抗議して国会前でアクション

 
日付:  火曜日, 2009-07-28 15:00
 

 7月28日の午後3時から参議院議員会館にて、テレビカメラを含めた報道陣の前で執行抗議の記者会見が行われ、社民党衆議院議員の保坂展人さんと、死刑廃止条約の批准を求めるフォーラム90、アムネスティ、監獄人権センターが発言しました。記者会見後には、参議院議員会館前にて、追悼と抗議のためのアクションもおこなわれました。2009年7月28日執行抗議アクション

森英介法相が3人の死刑を執行、半年ぶり3度目

 
日付:  火曜日, 2009-07-28 10:00
 

 麻生内閣の森英介法相が、山地悠紀夫さん(大阪拘置所)、前上博さん(大阪拘置所)、陳徳通さん(東京拘置所)の3人に対して死刑を執行しました。森英介法相による死刑執行は昨年10月28日、今年1月29日に続いて半年ぶり、3回目です。
 2007年12月の鳩山邦夫法相(当時)による執行以来、ほぼ2~3カ月に1度のペースで行われてきた死刑執行を、森英介法相が半年近くにわたって行って来なかった背景には、昨年10月28日の飯塚事件・久間三千年さんの執行が「冤罪執行」の疑いが濃厚になったという事情があったと思われます。
 飯塚事件は6月23日に再審開始が決定した足利事件と同時期の事件で、ともに初期のDNA鑑定が決め手となっており、どちらも無罪が争われていました。久間三千年さんの有罪認定の決め手となったDNA鑑定は足利事件と同じ「MCT118」式の検査法で、しかも、久間三千年さんのDNA型は菅家利和さんの DNA型と同じ「16-26型」とされていました。菅家さんに対するこのDNA鑑定が誤りであったことが明らかになった今、久間さんの冤罪の可能性は一段と高まっていました。
 山地悠紀夫さん、前上博さんはともに、控訴を取り下げ一審判決限りで死刑が確定しており、刑の確定から2年余りでの執行でした。陳徳通さんは上告審判決で死刑が確定しましたが、これも3年余りでのスピード執行でした。最近は、上訴を取り下げた人や確定後間もない人をスピード執行する例が増えています。
抗議声明