死刑廃止デー集会 「裁判官の証言、誤判は避けられない!」

 
日付:  土曜日, 2009-10-10 13:00
 

 死刑廃止世界連盟(World Coalition Against the Death Penalty)が2002年に発足し、その翌年から10月10日を世界死刑廃止デーとしました。加盟団体である「死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90」が中心となって、毎年この日に集会を開いています。今年は「響かせあおう 死刑廃止の声2009 裁判官の証言 誤判は避けられない!」が3部構成で行なわれ、約250名の人たちが集まりました。

 最初に、死刑廃止議員連盟の事務局長である保坂展人さんが発言されました。その後、同議員連盟会長である亀井静香さん、社民党党首の福島みずほさんからのメッセージが読まれました。保坂さんは、民主党に政権が変わった今こそ、死刑制度に関して国民的な議論を起こそうと訴えました。

 第1部は今年で5回目となる「死刑廃止のための大道寺幸子基金」主催『死刑囚の表現展』の選考委員による作品の講評と受賞作の発表がありました。選考委員である加賀乙彦さん、川村湊さん、池田浩士さん、太田昌国さんが壇上で話されました。文芸作品が10作品、絵画作品が11作品の応募がありました。何枚にも渡る迫力ある山水画を描かれた謝依梯さんが優秀賞を獲得、その他奨励賞が3作品、努力賞が4作品、技能賞が1作品となりました。また基金から拠出される再審請求等への補助金が、6名の方に出されることも発表されました。

 第2部では「足利事件」の菅家利和さんと佐藤博史弁護士が登壇し、岩井信弁護士が進行役となって事件について話されました。始めに佐藤弁護士が事件の概要を、地図や証拠品の映像を映し出しながら説明しました。菅家さんが無理やり自白させられ犯人とされたこと、地裁から最高裁までの審判で正しい審理が全くなされなかったこと、新しいDNA鑑定でやっと無罪を証明できたことの経を述べられました。その上で、間違ったDNA鑑定だけの証拠で、昨年10月に死刑執行されてしまった「飯塚事件」の久間三千年さんのことに言及されました。誤った証拠で死刑宣告され、処刑されてしまったことの理不尽さを断罪し、このようなことを招く死刑制度は即刻無くさなければいけない、と強く訴えました。その後、検察から菅家さんの尋問テープが新たに渡されたこと、何とか再審の場においてテープを公にしたいことなどが、話されました。「開けたパンドラの箱を、検察と裁判所はむりやり閉じようとしている。私たちは決して箱を閉じさせず、どうしてこのような冤罪事件起きたのかを、再審を通じて全てを白日の下に出させなくてはいけない」と情熱を込めて佐藤弁護士は訴えました。

 第3部は、元裁判官からのアンケート結果を基にした、元裁判官によるシンポジウムが行なわれました。これまで死刑を宣告してきたかもしれない元裁判官へのアンケートを行い、その結果を基に、元裁判官三人と、進行役の安田好弘弁 護士が話し合いました。安田さんが「誤判が避けられないと答えている人が、実に8割~9割いるということに、私たちは一番驚いたのです」と言うのにたいして、木谷さんが次のように答えました。「私は誤判が避けられるという人が12名いることに驚きました。刑事裁判をやっていれば、誤判は必ず起こるものです。私の出した判決でどれが誤判であるかは今もわかりませんが、誤判であった可能性は常にあります」。誤判が避けられないのは、裁判官をやっている者にとっては当たり前のことである、と木谷さんが述べられたのです。三人の元裁判官のお話からは、現状の司法界の持つ絶望的な状況が浮かび上がってきました。

 刑事裁判で誤判が避けられないとするならば、少なくとも死刑制度は即刻無くさなくてはいけない。ましてや死刑執行は絶対に止めなければいけない。そのことの思いをますます深くする集会でした。