中国政府が残りの日本人死刑確定者3名の死刑執行を通告、岡田外相が懸念伝える
岡田外相は4月2日の定例記者会見で、中国政府が麻薬密輸罪で死刑判決が確定していた日本人死刑囚3人の死刑を執行すると通告してきたことを明らかにした。死刑執行を通告されたのは、武田輝夫死刑囚(67歳)、鵜飼博徳死刑囚(48歳)、森勝男死刑囚(67歳)の3人。
中国で死刑判決が確定した日本人は現在4人おり、このうち赤野光信死刑囚(65歳)については、3月30日までに死刑執行の通告が日本政府にあった。しかし、日本政府はこれに全く対応せず、中国政府はその姿勢を見て残りの3名の死刑執行を通告してきた可能性がある。赤野死刑囚については4月5日にも、残りの3名については4月8日にも死刑が執行される可能性がある。
3名の死刑執行の通告に対する日本政府の対応として、岡田外相が駐日中国大使を呼んで日本の国内世論の影響などについて懸念を伝えたが、「刑罰は内政問題」との観点から死刑執行の中止は要請していない。その一方で、外相は「果たして適正な手続きが取られているのだろうかという声が世論の中にある」と述べ、これを駐日中国大使にも伝えたとされる。
しかし、これこそかつて欧米の「先進国」がアジアの「後進国」に対して治外法権を主張したのと同じ論理で、自国の司法制度の優越を主張し日中両国国民の排外熱を煽るだけであろう。確かに、通訳の問題を含めて手続上の問題があることは確かであり、適性手続は内政問題を超えた普遍的な人権問題である。しかし、その点では死刑問題も同じで、死刑問題はいまや内政問題を超えた普遍的な人権問題である。この点を正面から認め、日本も死刑廃止に向かうことを明確にしつつ中国政府に死刑執行の停止を求めることこそ、この問題に対する正当な対応の方法である。
中国での死刑執行をめぐっては、昨年12月に麻薬密輸罪でイギリス人死刑囚が死刑を執行される際に、イギリス政府は精神疾患を理由に執行停止を求め、執行後もブラウン首相が執行を非難する声明を出した。2005年にシンガポールでオーストラリア人の死刑が執行されたときにも、オーストラリア政府はくり返し死刑の執行停止を求めたという。両国とも死刑制度を廃止しているがゆえに、このように強い対応をとることができた。
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