日本カトリック正義と平和協議会の抗議声明(08-10-28)

2008年10月28日
 
法務大臣 森 英介 殿
 
日本カトリック正義と平和協議会
死刑廃止をもとめる部会
部会長 ホアン・マシア
 
 
 日本カトリック正義と平和協議会死刑廃止部会は、福岡拘置所の久間三千年(くまみちとし)さん、仙台拘置所の高塩正裕(たかしおまさひろ)さんに対する死刑執行に強く抗議します。
 
 今回の執行は、昨年12月以来、10ヶ月で6回、のべ18人に死刑が執行され、前回の執行から1か月半しか経っていません。今回の執行で、ベルトコンベヤ式死刑執行が確立されたことに、深い悲しみと怒りを禁じえません。今回の死刑執行に対する法務省の姿勢は、国際人権委員会が最終所見を決定しようという時期に合わせようとするもので、これには、回心しキリスト教徒になった死刑確定者を、クリスマスの時期に合わせて死刑執行した、昨年の事例とともに国の死刑に対する執着した強い意志を感じないではおれません。
 
 私たちは、繰り返し死刑の執行停止を訴えてきました。聖書によれば、生殺与奪の権利は神の分野に属し、また、神はどんな罪人も悔いあらためるよう望まれていると教えています。私たちは、前教皇ヨハネ・パウロ二世の「正義なしに平和はなく、ゆるしなしに正義はありません」『2002年世界平和の日メッセージ』(教皇ヨハネ・パウロ二世)という精神にこそ、人間らしい道を生み出す力があると訴えています。聖書には、罪人が十字架上でイエスにゆるしを求める場面があり、人は死の直前まで、神にゆるしを求めることが大切なことであると教えています。それは犯罪者が本当に罪を償い、神のゆるしを得ることによって、安らかな死を迎えるためです。
 
 私たちは、加害者を死刑にするよりも、更生と犯罪抑止に傾注する社会、復讐や死の応酬ではないいのちを大切にする社会の育成を目指しています。死刑が世論に支持され、死刑執行が増加しているものの凶悪犯罪が一向に減らないのは、死刑が犯罪抑止につながらず、社会に暴力の連鎖を肯定している証しだと考えます。教皇庁は、「どんな凶悪犯罪に対しても非致死刑罰のみを政府は課すべきである」(第54回国連総会、「116A」に関する、教皇大使レナート・マルティーノ大司教からの意見表明)と指導しています。そして今日、「犯罪者から自らを更生する機会を完全に奪うのではなく、二度と罪を犯さないようにすることで犯罪を効率的に防ぐ」という新たな可能性も政府は手にしている(ヨハネ・パウロ二世『いのちの福音』56参照)と教えています。
 
 私たちは犯罪と更生について、今一度本気で考え、いのちの大切さがわかる人間の育成をするべきと考えます。また国に対しては、いのちは神聖で神からいただいたものであるということを心に留め、あらためて死刑執行を停止し、犯罪抑止に全力で取り組むことを要望します。