WCADP(死刑廃止世界連盟)のスピーディー・ライス教授が議員会館で講演
2月20日、衆議院第2議員会館会議室で、スピーディー・ライス教授(WCADPの加盟団体である米国の死刑廃止NGOデス・ペナルティー・フォーカス理事、米国ワシントン&リー大学ロースクール教授)による講演会を開催しました。
ライス教授は、米国において1999年から2008年の10年間に死刑判決が284件から111件に、執行人数は85人から37人へと劇的に減少している事実をあげ、これは各州法のレベルにおいて、できるかぎり死刑評決を避ける努力を行い、さらには州レベルの取り組みが精神遅滞者や未成年者に対する連邦最高裁での死刑違憲判決につながったことによる成果だと指摘。
さらに、各州での死刑を制限したり、死刑の廃止をめざす立法化の動きが活発化し、講演時現在、少なくとも8つ州で死刑廃止ないし停止を求める法案が審議されている状態を紹介。議会における取組みのなかでも有力なものとして、超党派議員のイニシアチブにより死刑制度に関する調査委員会を設置し、この委員会がさまざまな角度から死刑問題について検証した結果を報告書にまとめ、改革の方向性を提案する、という手法が示されました。
この場合、同委員会には死刑制度の廃止派・存置派双方を含み、かつ被害者側や宗教者、刑務所関係者、法執行官など多様な利害関係者の意見を反映する構成とすること、また調査のための十分な時間的余裕と人的・物的資源が確保される必要があることが重要なポイントであることも強調されました。
このような取り組みの成果の一例として、死刑制度の強固な擁護者と見られていたニューメキシコ州のリチャードソン知事が、委員会の調査結果など通じて、「今度死刑廃止法案が提出された場合には自分は拒否権を発動しない」と示唆するまでに至ったというエピソードを紹介されました。
告知が急であったため参加人数は多くはありませんでしたが、議員2名、秘書8名が参加し、活発な質疑もなされました。とりわけ、米国と異なり地方自治体に法制定の権限がない日本では、米国のような手法はとりえないのではないか、との問いには、たとえそうであっても、市町村などが死刑廃止の決議を採択し、それを積み上げていくことで、廃止を求める政治的意思を形成していくことができる、との指摘には極めて説得力がありました。日本で死刑廃止を宣言している自治体は極めて少数なうえ、その存在すら認識されていない状況ですが、それぞれの地域や持ち場で、足元での活動をする重要性を改めて実感しました。
・スピーディー・ライス教授の講演(全文)
・当日配布資料:死刑廃止法案が提出されている州